自分の助言集をつくる
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複数の病院というのが、治療を受ける病院を転院されたのか、あるいはかかりつけ医からがんの治療を受ける病院を紹介されて転院したのか、状況が具体的にはわかりませんが、現在すすめられている医療システムの一つに『医療連携(病診連携、地域連携ともいいます)』があります。
『医療連携』というのは、診療所(クリニック)と病院、病院と病院がスムーズに連携をとりながら、患者さんが安心して、継続的に医療を受けられるシステムです。
また現在、厚生労働省が整備をすすめている『がん診療連携拠点病院』の指針においても、地域の医療機関との診療連携の推進がうたわれており、拠点病院の指定要件に、地域の医療機関への診療支援や病病連携(病院と病院の連携)・病診連携(病院と診療所の連携)などが、盛り込まれています。
つまり、患者さんが安心して検査や治療、治療後の経過観察などを受けられるような整備がすすんできているということになります。
医療連携等で病院を移ったり、あるいは患者さんの希望で転院するときに必要で最も大切な情報は、患者さんの医療情報です。どういう診断で、どういう治療を受けたのか、病気の経過はどのようになっていて、現在どのような状況なのか等を、転院先の医師が理解する(転院先の医師に情報提供する)ための書類や資料になります。主には、診療情報提供書(『紹介状』といっているものの多くは、この診療情報提供書のことです)と画像などの検査の資料になります。(病理組織のレポートも大切です)。
時々、これまでの全カルテのコピーを持参される方もいらっしゃるようですが、その患者さんをはじめて外来で診察する医師は、その場でまず患者さんの状況を把握する必要があります。一方、多くの病院では、たくさんの患者さんを外来で診ていくことになり、短い診察時間の中で、カルテを全部読んでいる時間はとれないものです。診療情報提供書は、カルテをコンパクトにまとめた、これまでの担当医の所見といってよいでしょう。
上の項目で、病院を移るときに必要な医療情報のお話をしましたが、もう一つあったほうが良い情報として、あなたが新しい医師に伝える情報があります。この場合も、もし毎日日記のようにつけていたものや、長文のものですと、なかなか読む時間が作れないと思いますので、自分なりにコンパクトにまとめたものを作ると、便利だと思います。この作業は、自分の病気や治療の経過を振りかえりながら、頭の中を整理する効果もあります。
書き出す項目は、以下の項目です。
○ 病名・病期
○ 病気や治療の経過
○ 現在内服している薬
○ 現在治療を継続して治療を受けている他の病気
(例: 糖尿病でインシュリンを○単位打っている)
○ 現在ある症状
○ 現在困っていることや不明なこと
診療情報提供書や検査の資料を持参しても、たとえ全カルテのコピーを持参しても、それだけでは補えない情報があります。前の病院と同じ情報を転院した病院に100%求めるのは難しいことを認識しておく必要があるでしょう。そのうえで、医療者間の連携のマイナス面にとらわれるのではなく、自分が積極的に、医療者に知っておいてもらったほうが良い情報は提供する、くらいの心づもりが大切です。
このように、がんなど長くつきあっていく病気の場合、病院を移るということは情報という面ではマイナスな面もあると思います。ただし、病院を変わったことで、あなたの納得のいく治療を受けられたとしたら、情報面でのマイナス以上に、あなたにとって、得られるものは大きいと思います。あなた自身も情報提供者であることを忘れないでおいてください。
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